インフラを守ること,PDCAを回すこと
2025年1月に埼玉県八潮市で発生した下水道漏水による大規模道路陥没事故は,水道インフラの長期停止を引き起こしました。こうした事例からもお分かりの通り,水道や電気,情報インフラといった社会基盤の維持・管理は非常に重要です。
情報基盤センターが管理するキャンパスネットワーク,認証基盤をはじめとする情報基盤システムは,本学の運営に不可欠なインフラそのものです。しかし,水道や電気と異なり,情報インフラは常に進化の途上にあるとともに,内外からのさまざまな脅威にさらされています。例えば,外部からのDDoS(分散型サービス拒否)攻撃やポートスキャン,内部からの不適切なネットワーク接続(ネットワークループなど),MAINSにおいて禁止されているWi-Fiルーターの接続,さらには各種ソフトウェアの脆弱性対応などが挙げられます。このため,継続的な監視・保守や迅速な更新が必須です。
情報基盤センターの業務の多くは,構成員からは見えにくいインフラの更新・保守・防衛活動であることをご理解ください。
昨年度は大規模なシステム導入やシステムリプレイスはありませんでしたが,利便性向上や機能追加のためのシステム調整を多数実施しました。主なものを以下に挙げます。
- 大学院前期課程改組や領域事務廃止に伴う各種システム改修
- 学生勤務管理システムの機能追加
- Amazon Business,就業管理システムとの認証連携
- 情報基盤センターChatBotの改善
- 電子ワークフローの速度低下問題への対応(センタースタッフによる原因の詳細調査,およびその調査を基にしたメーカーによる対応により2025年3月25日に解消しました。ご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます)
また,今年度入学生より名工大IDのランダム化を部分的に実現しました。これにより,入学前の学生に対する電子メール連絡が可能となり,事務作業の効率化を実現しました。この名工大IDのランダム化(下3桁)については情報基盤センターが10年以上前から提案していたものです。しかし,事務局との調整がつかず学生番号の下3桁は従来通り50音順のままとなり,学生が2つの異なるIDを使い分ける状況となったことについては課題が残りました。
2024年度の当センターの取り組みの一部を,以下で簡単に報告させて頂きます。
情報基盤システム関連
認証基盤システム関連
- 認証基盤システムの強化(Amazon Business,就業管理システムとの認証連携)
- 名工大IDランダム化に対する様々なシステムの改修対応
- Microsoft 365における多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)の仕様変更に伴うシステム変更対応
事務システム関連
- 業務掲示板における添付ファイルプレビュー機能の追加
- 電子ワークフロー改善(立替払請求書廃止関連改修,Amazon Business導入に伴う帳票改善,物件・工事請求書の経路変更改修)
- 修士論文提出システムの開発継続(博士論文提出に続く電子化拡大)
- 施設管理システム(施設版統一データベース)の新規開発
- SharePoint Onlineの使用容量月次レポートシステム開発
- 学生健康診断システムの改良
- 統一データベースにおける所属組織の編集権限を人事課に一元化する改修
キャンパス情報ネットワーク(MAINS)関連
- IP電話交換機リプレイスに先行しTeams Gatewayの更新
- MAINSデータベースへのセキュリティ情報追加,自動更新依頼システム構築
- 学内メールサーバー群の更新
学習・研究システム関連
- GakuNin RDM(研究データ管理基盤)の学内展開,およびメタデータ管理機能調査
- GakuNin LMS(学習管理システム)の学内展開と学術データ管理方法の検討
利用者サポート関連
- ユーザーズガイドやセンターウェブの記述の定期的な更新・削除・追加(生成AI学習用メタ情報としての活用)
- 「情報基盤センターChatBot」の継続的改善
- ITサポート窓口スタッフ不在時の予約対応システム試験運用
サイバーセキュリティ関連
今年度は博士論文提出で先行して行われた電子化を,修士論文提出にまで拡大する予定です。また,施設版統一DBである施設管理システムも今年度早期に運用開始予定です。さらに事務棟改修に伴うフリーアドレス化に対応した新事務用PCの先行導入も行います。
世間ではDX(デジタルによる変革)が注目されていますが,情報基盤センターではDXの前提となる電子化を着実に推進していきます。
情報基盤センター長 松尾 啓志
令和7年4月