目に見えぬ大量のカイゼン作業と変化への対応

例年に比べて利用者の目に見えるシステム導入や大規模な変更などがなかった2023年度ですが,情報基盤センターの業務は各システムにおける機能改善や組織改組に伴うシステム改修,外部からのサイバー攻撃などに対するセキュリティ対応など多岐に渡ります。特に本学の度重なる組織改組に対するシステム改修は困難を極めており,このままでは近い将来にシステムが破綻する可能性も否定できません。その理由として,下流である情報基盤センターに変更後の正確な情報が知らされるのが遅過ぎることや,改組された組織に対してシステム改修に必要な様々な権限・属性が未決定であり,認証・認可を伴う情報基盤システムにおいては改修しようにも改修ができないということもあります。本学はDX推進を掲げておりますが,その掛け声の前に既に動いているシステム群を前提・考慮した組織運営を行っていただくことを強くお願いいたします。

この4月より,当センターで開発した生成AIを利用した「情報基盤センターChatBot」を公開する予定です。生成AIは原本となるドキュメントに間違いや語句の不一致などがあると,結果としてウソ(Hallucination)をつくことになります。生成AIにウソをつかせないために,昨年度中には関連マニュアル類を精査し,大規模な加筆修正を実施しました。加えて,本学事務向けのChatBotも計画中です。情報基盤センターChatBotを皮切りに,事務関連のマニュアル類の見直しが一気に進むことを期待しております。

また,今年度中には新入生に付与される基盤ID(名工大ID)のランダム化を予定しております。基盤IDのランダム化を行うことでこれまで入学直前となっていた基盤IDの附番が迅速に行えることが期待できます。これは電子化された申請プロセスにおいては重要な措置となります。

2023年度における当センターの取り組みの一部を,以下で簡単に報告させていただきます。

情報基盤システム関連

認証基盤システム関連
  • 教員等の所属であった「領域」の廃止や教育類の廃止に伴う,統一DBを始めとする各種システムの改修
  • 各種ML,ポータルサイトの棚卸と削除
    昨年度の学外公開サイトやAzureゲストアカウントの棚卸に加え,既に使われていないMLやポータルサイトの削除も実施しました。これらの放置は重大なセキュリティリスクにつながる恐れがあります。使用を終えたサービスは,可能な限り当センターに終了のご連絡をいただけますと幸いです。
事務システム関連
  • 新電子ワークフロー(コラボフロー)に全帳票を移行完了
    昨年度春の会計系帳票の移行に加え,年内に学務系帳票の移行も完了し,これにより全ての帳票の移行が完了しました。
  • 立替払請求書・会議等実施伺を新規帳票化
    立替払請求書・会議等実施伺を新たに電子化(ワークフロー帳票化)しました。これらは全て当センターからのカイゼン提案であり,今後は事務の皆様からの提案も期待しております。コラボフローは旧ワークフローと比較して開発コストは比較的低くなっておりますが,ワークフロー帳票化する前にまずは電子化に適した業務整理をお願いいたします(アナログの事務手続きを業務整理せずにそのまま電子化すると,逆に煩雑になってしまうケースも多々あるためです)。
  • 博士論文受付の電子化(論文提出システムの開発)
    博士論文受付の一連の流れをMicrosoft Power Platformを用いて電子化しました。修士や卒業論文の受付も視野に入れた設計となっております。
  • 事務用シンクライアント等で利用されているファイル共有サーバー(Xフォルダ)のクラウド化
    これまでXフォルダと呼ばれていたファイル共有サーバーは学内設置のオーソドックスなもので,誰に見せるといった認可の付与や管理がユーザーではできない上,全文検索も不十分でした。そこで,これらの機能を備えたSharePoint Online(クラウド)をXフォルダのファイル置き場として利用するシステムを開発しました。運用直後は数年間もアクセスしていないものを大量に含んだ事務データが一気にクラウド上にコピーされたため,結果としてレスポンスが大幅に低下するといったトラブルが発生しました。そこで一定期間アクセスのないデータをWフォルダに自動で移動させるシステムを急遽構築し,レスポンスの大幅な向上に成功しました。

キャンパス情報ネットワーク(MAINS)関連

  • MAINS接続時におけるWeb認証方式の廃止
    Web認証はセキュリティ上の問題だけでなく,エッジスイッチの負荷が高くなる問題もありました。そこで昨年度から無線LAN(Wi-Fi)はIEEE802.1X認証のみとし,有線LAN接続はMACアドレス認証のみに構成を変更しております。なお,未だに無線LAN接続時に参加するサブネットに対する誤解が散見されます(無線LAN接続したPCからネットワークプリンターが見えない等)。無線LAN接続時に研究室等のサブネットに参加するには,統一データベースでの事前登録が必須です。詳しくはユーザーズガイドの当該章をご参照ください。
  • オンラインストレージサービス(disk.ict)のリプレイス
    OneDrive for Businessの大幅な保存容量削減を受けた救済措置として,これまで50GBが上限であったオンラインストレージサービスのハードウェアを緊急リプレイスし,本学教員1人につき1TBが利用可能なディスクスペースを提供開始しました。本サービスはOneDrive for Businessほどの利便性はないものの学外からはアクセスできない分セキュリティは高いため,機密性の高いデータの保存などにご活用ください(事務・技術職員は従来通り50GBを上限の目安としてご利用ください)。
  • MAINSデータベースの機能拡張
    MAINS接続されている機器のセキュリティ情報(OSやソフトウェアが最新版に更新されているか)をMAINSデータベースで確認できるとともに,定期的にメールで情報提供を行うシステムを開発しました。

利用者サポート関連

生成AIの開発でも述べた通り,ユーザーズガイドの全面改訂を行いました。また,ウェブのFAQなども随時更新を行っています。情報基盤センターの負荷軽減のためにも,当センターへお問い合わせの前にまずは「情報基盤センターChatBot」をお試しいただくようお願いいたします。

サイバーセキュリティ関連

サイバーセキュリティセンターから追って報告があるため詳述しませんが,両センターのスタッフはほぼ共通です。しかし,近年はサイバーセキュリティセンターの業務が激増し,情報基盤センターの業務を圧迫している状況はご理解ください。

この4月より,個人に割り当てるOneDrive for Businessの容量を従来の5TBから原則50GBへと大幅に削減いたしました。これはMicrosoft社による突然の方針変更によるものであり,1テナント(本学は1テナント)につき,本学の契約では200TBが上限となります。この容量の中にはExchange Online(=教職員/学生メール),SharePoint Online(=教職員ポータル)上のファイル(Teams内のファイルを含む),OneDrive for Businessなど,クラウド上に存在する全てのファイルが含まれます。従って,教職員/学生メールやSharePoint Onlineを持続可能な運用とするためには,OneDrive for Businessの容量削減は不可避でした。積極的に利活用されていた構成員の方には大変ご迷惑をおかけすることとなりましたが,何卒ご甘受いただきますようお願い申し上げる次第です。


情報基盤センター長 松尾 啓志
令和6年4月